ダブルタップレバーの機構を見る
新しいロードに旧Forceのシフターを移植しようとした。シフトワイヤーとブレーキワイヤーはそのまま流用するつもりだったが、シフトワイヤーがシフター付近でほつれてしまっていたので交換することにした。
古いワイヤーを取り除き新しいワイヤーを通そうとしたが、うまく通らない。シフターの外装はプラスねじで固定されているので通常ユーザーが分解しなくてもいいはずだが、ちゃんとシフトワイヤーを通す穴にワイヤーが入っているか不安だったので一度開けてみることにした。
汚い。赤い部品の白い所の穴がワイヤーを通す部分だが、ワイヤーが入らない。中で詰まってるんだろうか?と思ったが少しずつ力を入れながらワイヤーを押し込んだらちゃんと反対側から出てきた。
ちょっと押し込む力が足りないだけだった。分解する必要はあまりなかった。せっかくなので動きを観察してみる。
一応ダブルタップレバーの動作はSRAMのページに説明がある。
シマノが二つのレバーでシフトアップ/シフトダウンを行うのに対して、SRAMのダブルタップレバーは一つのレバーでシフトアップとシフトダウンの両方を行う。この機構は二つの歯止めのあるラチェット機構により構成されており、何もしないときは右の歯止めにより歯車が保持されている。
シフトアップ時は左の歯止めが右の歯止めを持ち上げて右の歯止めを開放して歯車が下に回り、左の歯止めが歯車を止める。この状態でレバーを戻すと再び右の歯止めが歯車にかかる。
トップ側最終段では最初から左の歯止めが歯車を保持するので右の歯止めを持ち上げても歯車が回らない。
シフトダウン時は左の歯止めは右の歯止めの開放を終了しつつ歯車を上に回し、戻る際は右の歯止めが左の歯止めを開放しつつ歯車を保持することで歯車が下に回らないようになっている。
旧Forceのシフトダウンは一度に3段までだが、カバーをはずした状態だとそれ以上の段数を一度にシフトダウンできる。カバーでレバーの動きを制限して変速段数をコントロールしているだけのようだ。つまりカバーを削れば一度に4段以上のシフトダウンも可能。あまり意味があるとは思えないが。
ロー側最終段では左の歯止めが右の歯止めの開放を終了する場所までしか回せず、戻る際には右の歯止めが左の歯止めを開放した際に歯車が下に回り、右の歯止めにぶつかって止まる。
ダブルタップレバーはロー側最終段でシフトダウンしようとすると押し込みが甘いとシフトアップしてしまう。このシフトアップをキャンセルするにはかなり強い力で押し込む必要がある。そしてこのキャンセルの際は心臓に悪いバキッという音がする。この音の正体は左ラチェットが解放された後に結構な距離を回って加速した歯車が右ラチェットにぶつかる音のようだ。
上ではロー側最終段では左の歯止めが右の歯止めの開放を終了する場所までしか「回せず」と書いたが、逆にこの位置までは「回せてしまう」。回せる範囲が狭いとはいえ、ロー側最終段からさらにワイヤーを引くという動作が発生するため、ディレイラーの調整次第ではロー側にチェーン落ちが発生したり、ホイールによってはリアディレイラーがスポークをかすめたりすることすらある。
これを防ぐためにはリアディレイラーをややトップ側に寄せておくことと、しっかり動作範囲を制限しておくことが必要となる。が、動作範囲を制限しすぎるとワイヤーをロー側最終段から引けなくなり、シフトアップをキャンセルする動作ができなくなる。インナーローでさらにシフトダウンしようとしているような状況でシフトアップしかできないというのは厳しい。チェーン落ちは発生させず、しかしシフトアップキャンセルは可能な位置に調整するというややシビアな調整が必要になる。
シマノはロー側最終段までくるとワイヤーを引けなくなるのでこのようなことはない。ロー側最終段でのシフトアップキャンセルの際の操作の重さと、ややシビアなディレイラーの調整はダブルタップレバーの最大の欠点といえるかもしれない。しかし大きなシフトレバーでの確実な変速とカチカチという操作感はそれを補って余りあると感じる。